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​身近な風景

執筆者の写真tokyosalamander

「クマゼミ」便り(続報)

更新日:2023年8月25日

8月24日(木)、瀬戸内海の「しまなみ海道」を旅行中の妻とその友人のHさんから、「クマゼミ」の写真や鳴き声が届きました。「クマゼミ」は、日本国内に生息しているセミの中で最大級の大きさのセミです。

↑クマゼミの死骸の写真も送ってくれました。


体色は真っ黒で、これが「クマゼミ」の名前の由来とされています。「大きくてクマのように真っ黒なセミ」とはインパクトありますね。かなり手ごわそうです。


クマゼミは、東海地方から九州にかけての西日本に広く分布しており、7月中旬から9月上旬にかけての午前7~9時を中心に、「シャアシャア」もしくは「ワシワシ」と大音量で鳴いています。午後になると鳴き声はピタッと止むそうです。


今回、鳴き声が録音された動画も送られてきましたので、聞いてみてください。


ところで、近年の急速な地球温暖化によって、クマゼミの生息域が北上している、ということが起きています。最近、「NHKシチズンラボ」で、セミの大調査が行われました。それによると、クマゼミの生息域は、関東のみならず、東北まで広がっているらしいことがわかりました。クマゼミ|セミ図鑑|セミ大調査|NHKシチズンラボ


<クマゼミの分布>

〇監修:日本セミの会

〇宮城県、福島県、茨城県、栃木県については不明確

〇鳴き声のみの記録は、「いる(推定)」に分類


30~40年前の「クマゼミ」の分布の北限は、神奈川県の三浦半島周辺とされていましたが、現在では北関東でもぽつぽつと確認されています。実際に、栃木県宇都宮市では、2009年にクマゼミの成虫が捕獲されているそうです。


また、ウェザーニュースでも、2022年夏に、スマホアプリ「ウェザーニュース」のユーザーを対象にアンケート調査を実施しました。それによると、下の図のように、栃木県ではクマゼミは「いない」とされていますが、選択肢の「たくさんいる」「少しいる」「いない」のうち、最も割合が高かった回答を都道府県別に色分けしているので、「いる」と答えた人もいたのではないかと思います。


また、単純に温暖化だけが北上の要因ではなく、人による影響、つまり都市化がクマゼミの増加と深く関わっているそうです。こうした研究は、全国的なアンケート調査がとても有効です。


(おまけ)

セミの成虫の寿命は1週間」とよく言われますが、どうやら俗説だそうです。1か月くらいは普通に生きているそうです。これまでは、幼虫の時期は長く、成虫の時期はほんのわずかなら、鳴き声が多少うるさくてもしょうがないかと思っていましたが、1か月も鳴き続けるとなると、セミに対する見方が変わってくるかもしれません。



(続報:8月25日)

今回の記事では、「クマゼミの分布域が北上している可能性がある」という仮説を紹介しました。しかし、栃木県立博物館に問い合わせてみると、「確かに、宇都宮市内で鳴き声を聞くことはあるが、地球温暖化による分布域の北上という捉え方は誤りである。クマゼミの幼虫が植栽の移動に伴って、土ごと運ばれて、そこで羽化して成虫になったものが単独で鳴いているに過ぎない。その樹木と土がどこから運ばれてきたかが判明しているケースもある。鳴き声が聞こえたからと言って、そこで繁殖しているわけではない。クマゼミが数100キロも飛んで行くことはなく、人為的な要因(都市開発などの都市化)によるものが大きい」という解釈がなされており、地球温暖化による分布域の北上は起きていない、ということが研究者の間では定説になっているそうです。


このことについては、根拠となる論文などを調べ、改めて紹介したいと思います。

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