2024年5月4日(みどりの日) 佐野市葛生町にある「葛生伝承館」では、五月の節句に因んで、「祝い掛軸」展が開催されています。
「明治から昭和の初め頃まで、関東地方の一部地域では年末になると、子どもが生まれた家に親類縁者から縁起の良い、人物風景、物語の一場面などを描いた掛軸が贈られました。
贈られた家は、お正月にそれらを座敷に飾り、お祝いとしました。飾られた掛軸が多ければ多いほど、交際が多いことを意味し、家格を誇示したものだと言われています。」(展示解説より)
「これらの掛軸は、際物の生産が盛んだった佐野地域で大量生産され、各地へ出荷されました。最盛期だった大正時代には、年間10万本以上が生産されていたようです。」(同)
(注)際物とは?
ある時季の間際にだけ売れる品物。正月の羽子板、3月の雛人形、5月の鯉のぼりなど。
つまり、祝い掛軸(際物)は、その時限りのもので、飾られた後は破棄されるものだったようです。今回の「祝い掛軸」展で、展示されているものは、それぞれの家庭で大切に保管されていたもの、ということになります。永い眠りから覚め、再び、陽の目を浴びることとなりました。
「祝い掛軸」そのものは、特別高価なものではなかったようです。しかし、子どもが生まれた家に「祝い掛軸」を贈る風習(大正時代が最盛期)は、今から考えると、豊かな時代の象徴だったのかもしれません。
「祝い掛軸」展は、6月23日まで、葛生伝承館で開催されています。(入場無料、写真撮影可です)
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