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​身近な風景

蛇にまつわる人々④

執筆者の写真: tokyosalamandertokyosalamander

更新日:1月16日

2025年1月13日(月・祝)午後1時30分~4時10分、栃木県立博物館講堂を会場として、栃木県立博物館テーマ展「ヘビなんてきらい!」関連事業の講演会「ヘビなんて、キライ? いやいや、こんなにおもしろい!」が開催されました。当日は80名を超える大勢の参加者が集まりました。

本テーマ展を担当された栃木県立博物館の小笠原佑さんの「開会あいさつ」から始まりました。小笠原さんは「私はヘビが大の苦手です。見るのもイヤ、触るのは無理、首に巻くなんてありえない!」くらいにヘビがキライだそうです。「自然系学芸員だから、きっと生き物が大好きなんでしょう?」というイメージと小笠原さんとのギャップを逆手に取り、「ヘビなんて、キライ!」というテーマ展が企画されました。(企画展のチラシから一部引用)


今回の講演会は、栃木両生爬虫類の会会員(7組11名)によるヘビについての物語です。


栃木両生爬虫類の会代表の中島宏和さんから、「ヘビなんて、キライ!」に対する返歌として「いやいや、こんなにおもしろい!」というお話を楽しんでください、というあいさつがありました。

栃木県にはどんなヘビがいるの? ヘビの調査ってどうやるの? ヘビの標本ってどんなもの? ヘビを調べている人ってどんな人? みんなヘビ好きかというと、実は‥


トップバッターは、林光武さんによる「栃木県産ヘビのプロフィール」です。

林さんは、今回の発表の中で登場する栃木県産の8種類のヘビに関する予備知識として、それぞれ、どんなところに生息しているのか、主なエサは?、咬まれたらどうすればいいのか、といった「栃木県産ヘビのプロフィール」を解説してくれました。会場全体のヘビに対する興味が徐々に高まっていくのを感じました。



2番目は、佐藤宣明さんによる「道路で轢かれたヘビの記録から分かること」です。

佐藤さんは、2015年~2024年の10年間、県内を車で走り回っていた時に道路上で見つけたヘビの轢死体(一部生体)を写真に撮って記録しました。総数147匹を種ごとに分類し、年ごとに確認された時期などを分析することを通し、そこから分かってきたことを発表されました。轢死体の記録を地道に収集する佐藤さんの情熱と、そこから多くの情報が得られることに感動しました。



3番目は、木村有紀・岩渕真由美・川田裕美・齋藤史奈・小村優子(敬称略)による「タカチホヘビ調査をやってみた」です。木村さんが代表して発表しました。

木村さん達5名は、「県内のタカチホヘビは本当に生息数が少ないのか、自分たちで探し当て、確かめたい。」という熱い思いのもと、のべ3日間、夜間の路上で動いているタカチホヘビを目で探すことに挑戦しました。


「タカチホヘビは、そう簡単に見つからない。」という結論でしたが、簡単に分からないからおもしろい。仲間と一緒に調べるのが楽しい。すっかりタカチホヘビの魅力にはまっていました。今シーズンもタカチホヘビを探します、と力強く宣言してくれました。



4番目は、吉川夏彦さんによる「ヘビの学術標本を見やすく身近に感じてもらうために」です。

吉川さんは、博物館の仕事としてヘビの学術標本をつくっています。しかし、学術標本は一般の人には見にくかったり、なじみにくかったりします。そこで、もっと見やすく身近に感じてもらうために、標本をパックに入れる、という方法を考案しました。今回、吉川さんが作成した「パックに入れた標本」を持参してくれました。発表後の休憩時間には、大人から子供までが実際に手に取って、ヘビの感触を楽しんでいました。大好評でした。



休憩後の5番目は、境野圭吾さんによる「茂木町のヘビ類分布調査」です。

境野さんは、2019年に茂木町に移住しました。それ以来、茂木町周辺の両生爬虫類、コウモリ、昆虫などの分布を調査しています。2024年には、目視やロードキル、抜け殻の調査による茂木町のヘビ類の分布記録を報告しました。特筆すべき点として、栃木県で分布記録の少なかったタカチホヘビとシロマダラの分布を確認しています。精力的な調査について熱く語ってくれました。



6番目は、小林教太さんによる「ヘビのトラップ調査に挑戦」です。

小林さんは、仕事としている動植物調査の中で、通常のヘビ調査(踏査、目撃法)の補足として、「トラップ=罠」を使った調査に挑戦しました。様々な種類のトラップで調査し、トラップ調査が有効かどうかを、踏査による調査と比較しました。その結果、トラップでヘビの確認は期待できること、トラップは設置が容易で安価なカバーボード法がおすすめ、ということがわかったそうです。ヘビ調査の精度を上げることを目的としたトラップ調査ですが、常に生き物や環境への配慮を忘れない、小林さんの優しさを感じました。



そして最後は、中島宏和さんによる「ヘビ好きな私はこう育った」です。

中島さんは、今回の発表にあたり、「ヘビ好きな私」は、本当にヘビが好きなのか、どのように好きになっていったのか、好きになってよかったことについて、自問自答しました。そこで、小学校1年生の10月1日から6年生の卒業の日まで、一日も欠かさずつけていた日記を読み返し、「日記」から「ヘビ好き」をたどりました。そこには、ヘビとの出会いやヘビを飼育したこと、ヘビの飼い方などが書かれた大好きな本のことなどが、ぎっしり書かれており、それを読むことを通して、どのようにヘビが好きになっていったのか、小学生の中島君の姿が蘇りました。ヘビ好きの中島君を見守ってくれる大人たちがいて、大学生や社会人になってからも、ヘビにまつわる様々な人たちや本との出会いがあり、今の中島さんがいる、ということを話してくれました。



以上が、講演会「ヘビなんて、キライ? いやいや、こんなにおもしろい!」での「7つのヘビの物語」の概要です。


最後に、この講演会を企画した小笠原佑さんから、お礼のあいさつがありました。

小笠原さんは、この展示を通して、自分もヘビ好きになろうとか考えていたわけではありません。キライなものはキライなままで構わない、でも、キライなものに対して、今までと違った見方ができると、世界が違って見えてくるかもしれない。また、ヘビの話をしてくれた人たちが皆、きらきらと輝いている姿を見て、誰もが輝くことができる場所があることを実感することができたと話してくれました。



こうして、講演会は終了しました。正直、これほど素晴らしい講演会になるとは想像していませんでした。また、ヘビについて本気で語ることで、それぞれが歩んできた人生の一端が垣間見れたことにも感動しました。

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