2024年11月9日(土)、足利市立愛宕台中学校の土曜日授業として、足利大学工学部機械分野自然エネルギーコースの飯野光政准教授による「エネルギーと環境」に関する授業が行われました。
今日は「エネルギーと環境」と題する授業の2回目です。1回目の9月14日(土)は「風力発電」について学習しましたが、2回目は「波力発電」です。一人一人、波力発電装置を製作し、実際に発電することができました。
今回は「使われていないもの(エネルギー)を使う」ということが大きなテーマとなっていました。
人間はその歴史の中で、新しいものを使うようになっていきました。
絵や文章を書きたいとき(石、紙、木、パソコン‥)、物語や知識を伝えるとき(人同士の対話、紙や本、映像、VR‥)、物を作るとき(土、木、石、金属、ガラス、プラスチック‥)
人間は今までの方法やものの欠点を新しい方法やものを見つけることで解決してきました。エネルギー源についてみると、人間を使う、風を使う、牛や馬を使う、石炭や石油を使う、原子力を使う、ことによって手に入れてきました。
しかし、実はまだまだ使われていないエネルギーがあります。それを「未利用(みりよう)エネルギー」といいます。自然界に存在する未利用エネルギーには、小水力、河川水、海水の熱、地熱、地中熱、温泉熱、雪氷熱、空気熱、潮力、波力などがあります。
今回は「波のエネルギー」をどうやったら利用できるかに注目しました。
波のエネルギーは未利用エネルギーの中でも、一番大きいものの一つですが、実際に、世界で稼働している波力発電設備の発電量を全部合わせても、実用的な風力発電装置1台分の発電量にも満たないのが現状です。
そこで、日本で実際に動いている波力発電装置(福井県越前町)の様子を紹介してくれました。飯野先生は、日本で2か所しかない波力発電装置(越前町、岩手県釜石市)での実証実験に関わっています。
今回の授業では、波の力で空気を押し引きして発電する波力発電の原理を体験するため、飯野先生が試行錯誤して開発した「波力発電装置の模型」を組み立て、実際に発電するかどうかを確かめました。
このパックに中に、波力発電装置のキットが入っています。
実際のタービンを小型化したものです。すべて、飯野研究室で、3Dプリンターを使って製作したオリジナルです。
LEDランプを付けたモーターを装置にネジで固定し、モーターとタービンを綿棒の軸を使って連結させます。それを透明なアクリルパイプの中に押し込んでセットします。
飯野先生とアシスタントの大学院生らのサポートによって、全員が完成させることができました。
水を入れた大きなバケツに、完成させた波力発電装置を取り付けた小さなバケツを押したり引いたりすることで、波の上下動を再現させています。
すると、小さなバケツの中の空気が波力発電装置に押し出されたり、引き込んだりすることで、装置に組み込まれたタービンが回転します。その結果、タービンに連結しているモーターが回転し電力が発生します。LEDランプが明るく光りました。生徒たちから歓声が上がりました。
この装置の凄い所は、装置中の空気の流れの方向が絶えず入れ替わっても、タービンの形状を工夫することで、タービンは常に同じ方向に回転し続けます。これによって、波の上下動で、安定した電力が発生するという原理を体験することができました。
波力発電は、まだまだ実用化はされていませんが、波力エネルギーは人類全体の電力消費を超えるとてつもない量があります。そのため、世界中でいろいろな人がいろいろなアイディアで研究しています。
人間は「捨てているもの」「使われていなかったもの」を「より良いもの」にすることができます。例えば、これまでは、ごみを資源としてリサイクルしてきましたが、元よりも価値が高い(値段が高い)ものに変えることも可能です。漁師の網が高級バックに生まれ変わった例もあります。これは新しい考え方で、アップサイクルと呼んでいます。
「皆さんも使われていないもの、捨てられているものをみつけて、新しい方法・ものを生み出していってください」というメッセージを中学生たちに託し、授業が終了しました。
将来、波力発電が実用化される社会が来ることを期待しています。
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