6月17日(土)、星野先生の庭の芝生に生える「ネジバナ」を見せていただきました。
ネジバナは、ラン科の多年草です。ランの仲間と聞くと、「高貴な花」というイメージがありますが、一つ一つの花をよく見ると、淡い紅色の可憐な花が螺旋状に付いています。小さいながらもランとしての気品が感じられます。名前の由来は、花の付き方(ねじれた花序)からきていることは、言うまでもないですね。
また、多年草ですので、つんと真っすぐに伸びている本体の地下には、太い根が伸びているそうです。
ところで、ネジバナには謎があります。なぜ、ねじれているのか、さらには、右巻にねじれているのか、左巻にねじれているのか、です。そこで、星野先生の庭に生えているネジバナについて、どっち回りにねじれているのかを調べてみました。
これはどっち回りでしょうか?上から見ながら指でなぞってみると、時計回り(右巻)でした。
これはどうでしょう(左側)。反時計回り(左巻)です。一方、右側のように、どっち回りかわからないものもあります。
また、下のように、ねじれの小さいもの(上から下まで一回りしかしていないもの)もあります。
かなりの誤差はありますが、数えてみると、右巻(19本)、左巻(9本)、どちらでもない(11本)となりました。
さて、ネジバナにとって、ねじれることに何らかの意味があるのでしょうか。
このことについて、研究した論文が、株式会社バイオームのサイトで「ひねくれることには意味がある」として、以下のように紹介されていました。
『ネジバナは、ハナバチなどの昆虫に花粉を雌しべに運んでもらうことによって種子を作ります。ハナバチは、花がたくさんついた株に好んで訪れる傾向があります。そのため、ネジバナのねじれ具合が小さい株は、大きい株に比べて沢山花をつけているように見えるため、ハナバチが頻繁に訪れます。
しかし、ねじれの小さいものは大きいものよりも隣の花同士の距離が近いため、ハナバチは次々と同じ株の隣の花に訪れることが多くなり、自家受粉が頻発してしまい、種子の遺伝的多様性を高める面では不利です。
すなわち、ハナバチのような昆虫が少ない環境では、ねじれの少ない花(花同士の距離が小さく、たくさん咲いているように見える)が有利であり、昆虫が十分に存在する環境では、自家受粉をより防ぐことできるねじれの大きい花(花同士の距離が大きい)が有利になるということです。
生育する環境の訪花昆虫の量や質の差異により、どれぐらいのねじれを持った花が有利になるかが異なるため、ネジバナの花のねじれ具合は固定されることなく、様々なものが混在するのです。』
以上、内容は編集しましたので、正確には以下のサイトで直接ご確認ください。
次は、ねじれの方向性(右巻か左巻か)についてです。
これについても、調べてみると、右巻、左巻、どちらでもないが現れる場合、どちらかが優勢形質というわけでないようです。どの巻き方になるかがランダムに現れる、という遺伝的性質を持っていると考えられるそうです。
このことについては、以下のサイトを参照しました。
ネジバナの謎を解明する研究がなされていることに、敬意を表します。ほかにも、ラン科植物であるネジバナが根粒菌と共生していることを研究されている方もいらっしゃいました。
最後に、万葉集に詠まれているネジバナについて紹介します。
「芝付の 御宇良崎なる 根都古草 逢い見ずあらば 我恋めやも」
https://sabiejapan.com/learn/000133.html をご覧ください。以下に一部引用します。
(以下)
『芝付の御宇良崎(みうらさき)は、どこの地名を指すのかわかりませんが、その響きに、海につきでた芝生の岬が想像されます。
その海辺に住むうつくしい素朴な娘を一目見て、恋に落ちた歌なのでしょうか。あなたに逢うことがなければ、私は恋に苦しむことはなかったのに、と歌人はうたいます。
根都古草(ネツコグサ)は、捩花を指していると言われています。
捻れながら連なって咲く花に、千々に乱れる思いを重ね合わせたのでしょうか。』
(以上)
捩花(ネジバナ)の世界は、奥が深そうですね。
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