8月23日(水)、 佐野市を流れる菊沢川でスイレン科の「ナガレコウホネ」の花が見頃です。毎年、7月下旬から8月上旬になると、新聞紙上でも紹介されています。
堀米町の「菊川第4公園」の周辺が、最も繁茂しているそうです。
この辺りの「菊沢川」は、水量が多く水深もありますが、川底が見通せるほど澄んでいます。まさに、「清流」という言葉がふさわしい場所です。
佐野の地形は、秋山川や旗川の扇状地になっています。そのため、扇状地の地下を流れていた伏流水が、道の駅「どまんなか田沼」を過ぎたくらいから、かなりの量の湧水として、菊沢川に流れ込みます。その下流にある「菊水苑」(かき氷屋さん)あたりからは、まさに別世界の「清流」が現出しています。
ちなみに、佐野市の水道水は川から採っていません。すべて、地下水(伏流水)を使っています。このような水道水は大変珍しく、佐野では蛇口をひねれば、常に「おいしい水」が飲めます。
実は、このことは佐野市民にもあまり知られていません。しかし、7月8日にNHKで放送された「ブラタモリ」では、弁天池の湧水を「佐野の名水」として紹介してくれました(流石です)。「出流原弁天池湧水」は1985年、環境省の名水百選に選定されています。
ペットボトルに詰めた「佐野水」というブランドもあり、佐野市役所に行くともらえるかもしれません。(市販はされていません。水道の蛇口をひねれば出てきますからね。)
ちょっと横道にそれましたが、栃木県内には、以前は「コウホネ」1種しか生育していませんでした。そのため、「2005レッドデータとちぎ」では、「コウホネ」のみが絶滅危惧Ⅱ類(Bランク)に指定されています。
(栃木県「2018レッドデータブックとちぎ」p157~158 の図をもとに作成)
ところが、その後の研究で、1つの種とされてきた「コウホネ」の中から、2006年に「シモツケコウホネ」(栃木県内にのみ生育)が新種記載されました。さらに、研究を進めるうちに「コウホネ」や「シモツケコウホネ」とも異なる種が発見されました。それらは「コウホネ」と「シモツケコウホネ」の間で自然交雑した雑種であることがわかり、2007年に「ナガレコウホネ」として、新種記載されました。
さらに、栃木県立博物館にも取材しました。
コウホネの仲間は、自然状態で交雑が起こりやすい特殊なタイプであることがわかっています。いつ頃なのかはわかりませんが、「コウホネ」と「シモツケコウホネ」の生育地が接するような環境で、雑種が生じ、より流れの速い環境に適応し、定着していったのが、「ナガレコウホネ」なのではないかということです。ナガレコウホネは、栃木県だけでなく、群馬県にかけても分布しています。
「ナガレコウホネ」は、その名の通り、平水時でも膝上くらいに水深が深く、流れが速く、足元がおぼつかないような河川環境に生育しているそうです。その点では、菊沢川の清流は、ぴったりの生育環境なのかもしれません。
こうしたことから、県内には、「コウホネ」、「シモツケコウホネ」、「ナガレコウホネ」の3種が存在することになり、3種とも、栃木県のレッド゙リストで絶滅危惧Ⅱ類(Bランク)に指定されています。
「シモツケコウホネ」と「ナガレコウホネ」は、その多くは流れのある清流に生育しています。そして、それぞれの地元の保護団体が大切に守っていることが特筆されます。このように注目されることは、生育環境を維持したり、マニアなどによる盗掘を防ぐ点でも、重要だと思います。確かに、代り映えのしないベタな記事ではありますが、毎年の風物詩として、両コウホネの開花情報が今後も続くことを願っています。
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