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群響「管弦楽のための協奏曲」

執筆者の写真: tokyosalamandertokyosalamander

更新日:4 日前

2025年2月22日(土)、群馬交響楽団「第605回定期演奏会」は、ソロ、デュオ、オーケストラによる3つの協奏曲がコンセプトでした。ベルリンフィルのコントラバス奏者を迎えたコントラバス協奏曲、群響奏者によるバルトーク「管弦楽のための協奏曲」、圧巻でした。

指揮者:アレクサンダー・リープライヒ

コントラバス:エディクソン・ルイス(ベルリンフィル) *

コントラバス:市川哲郎(群響首席奏者) **

コンサートマスター:伊藤文乃


曲目

ボッテジーニ/パッショーネ・アモローサ * **

Giovanni Bottesini/ Passione amorosa

ロルフ・マッティンソン/コントラバス協奏曲 第1番 作品87 *

Rolf Martinsson/ Double Bass Concerto No. 1, Op. 87

バルトーク/管弦楽のための協奏曲 BB 123

Béla Bartók/ Concerto for Orchestra, BB 123


群響定期では、開演40分前にステージで「プレ・コンサート・トーク」を行っています。

今回は指揮者のアレクサンダー・リープライヒさんが出演されました。


さて、今回の演奏会の最初の聞き物は、初めて聞く「ロルフ・マッティンソン/コントラバス協奏曲 第1番」でした。コントラバスのルイスは、17歳でベルリンフィルのオーディションに合格した世界的な奏者です。コントラバスというと、低音をゴリゴリと弾きまくるイメージがありますが、弦を押さえる指の位置で低い音から高い音まで、自由自在に出せることに驚きました。また、弓を弦に叩きつける衝撃的な音も印象的でした。


ロルフ・マッティンソンは、1956年生まれの現代の作曲家で、コントラバス協奏曲 第1番が、管弦楽作家として国際的に知られるきかっけとなった作品だそうです。都会的な洗練さとともに、現代の抱える様々な悲しみや、すぐにでも起こりうる戦争への不安など、コントラバスならではの力強さで心に訴えかけていました。これは名曲だと思いました。そして、後から知ることになるのですが、この曲の雰囲気は、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」と繋がっていました。ちなみに、調べた限り、コントラバス協奏曲 第1番が収録されているCDは1種類しかありませんでした。https://ml.naxos.jp/album/PSC1324


最後に演奏された「バルトーク/管弦楽のための協奏曲」は、協奏曲を並べた今回のコンサートの終着点でありクライマックスでもありました。


第1楽章 序章

第2楽章 対の遊び

第3楽章 エレジー

第4楽章 中断された間奏曲

第5楽章 終曲


ハンガリーの作曲家ベーラ・バルトークは、ナチス・ドイツがチェコ、続いてポーランドを侵略した翌年の1940年にアメリカに渡りました。1943年2月(62歳)、ハーバード大学での連続講義の3回目を終えた後、体調不良のため入院し、白血病の診断を受けました。本人に病名を告知されることはありませんでしたが、バルトークは意気消沈していました。そこで、彼を元気づけるため、友人であるボストン交響楽団の常任指揮者セルゲイ・クーセヴィツキ―は、バルトークに作品の依頼をしました。バルトークは当初、健康状態の不安からその委嘱を断るつもりでしたが、 クーセヴィツキ―に説得され、引き受けることにしました。


「管弦楽のための協奏曲」の作曲は退院後の1943年8月から2か月足らずで書き上げました。全体は5楽章構成で、バルトークは「第1楽章の凝固から、第3楽章の陰鬱の死の歌を経て、終楽章の生の肯定へと至る」と記しています。初演は1944年12月1日にボストンでクーセヴィツキ―の指揮で行われました。幸いにも、当日の演奏の録音を聴くことができます。https://ml.naxos.jp/album/STR13614SD

その後、バルトークは1945年9月26日に亡くなりました。


曲の白眉は何といっても「第3楽章エレジー」ではないかと思います。全曲の構成がその苦悩を際立たせるようになっています。今日の開演前のプレトークで、指揮者のリープライヒさんから、「第3楽章では、空から爆弾がヒューと音を立てて落ちてきて、周囲を破壊していく様子が描写されている」という解説がありました。


そんなところにも、ロルフ・マッティンソン/コントラバス協奏曲 第1番との連続性を感じました。


演奏は、圧倒的な大成功を収めました。長身の指揮者が全身を使って、オーケストラに指示を出しており、時には、ダンスのステップを踏んでいるように見える瞬間もありました。指揮者の伝えたいことが明確で、それを引き出すテクニックが理に適っていることに感動しました。

「管弦楽のための協奏曲」、演奏の主役は群響のソリストたちでした。演奏にミスは全くなく、それぞれが自信をもってのびのびと演奏していることを感じました。

指揮者のリープライヒさんは、あくまで自分は黒子に徹するかのように楽団員を称えていました。

今回も、素晴らしい演奏会でした。終演予定時間を20分以上過ぎていたこともあり、2回目のカーテンコールの後、さようならと手を挙げて舞台袖に下がりました。どこまでも謙虚で、頭脳明晰な方だなあと思いました。




 
 
 

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