11月29日(水)。前日に職場の机の上に置いておいたフジの「さや」が見当たりませんでした。探してみると、床に落ちていました。
熟したフジの種子は、硬い「さや」の中に入っていますが、乾燥した「さや」が、一気に捻じれた勢いで、中の種子を遠くに飛ばします。そのため、机の上に置いてあった「さや」自体も飛ばされていたのでした。
大学構内のフジ棚には、茶色く熟した「さや」とともに、種子が弾け飛んだ「さや」もぶら下がっています。
弾け飛んだ「さや」の片割れが、散乱しています。
ところで、フジの種子が弾け飛ぶ時の速度はどのくらいなのでしょうか?
「天災は忘れられたる頃来る」の名言で知られる寺田寅彦という物理学者であり文学者がいました。その寺田虎彦が、昭和8年に「藤の実」という随筆の中で、弾け飛ぶフジの種子の初速を計算しています。
「地上三メートルの高さから水平に種子が発射されたとして、十メートルの距離において地上一メートル地点で障子に衝突したとすれば、空気の抵抗を除外しても、少なくとも毎秒十メートル以上の初速をもって発射されたとしなければ勘定が合わない。あの一見枯死しているような豆のさやの中に、それほどの大きな原動力が潜んでいようとはちょっと予想しないことであった。」
(この随想の全文は、インターネットの図書館「青空文庫」で読むことができます。)
フジの「さや」が弾け飛ぶことから、種子が飛び出す初速を計算する、という発想は、さすがに科学者だなと感心しました。
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