キンモクセイの香る風景
2026年10月8日(木)、大学構内を歩いていると、キンモクセイの香りが微かに漂っていました。近づくと、オレンジ色の花が甘くてしっかりした香りを放っていました。

大学の中庭には、キンモクセイがあります。


花は上の方から咲いていくようです。
キンモクセイは、ジンチョウゲ、クチナシと合わせて、日本の三大芳香木のひとつに数えられています。(田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』より)
キンモクセイの香りについては化学的な研究がかなり進んでいます。
キンモクセイの香りは一つの物質によるものではなく、スミレのような花の香り、桃のような果実の香り、そして爽やかな香りが組み合わさって生まれているということが分かってきました。Analysis of aroma-active compounds in three sweet osmanthus (Osmanthus fragrans) cultivars by GC-olfactometry and GC-MS - PMC
香りの成分 香りの特徴
β-イオノン スミレを思わせる甘く華やかな香り。ややウッディ
リナロール 花らしい、爽やかで柔らかな香り
γ-デカラクトン 桃を思わせる甘くフルーティーな香り
α-イオノン スミレに似た甘い香り
オシメン類 草やハーブを思わせる青々しい香り
つまり、キンモクセイの香りを人間の感覚に置き換えると、
「スミレの花の香り+桃の甘い香り+爽やかな草花の香り」
という組み合わせに近いということです。
甘さの中に、どこか爽やかさが感じられる理由も、この複数の成分の組み合わせで説明できます。

ところで、一定の年齢以上の人にとって、
「キンモクセイ=トイレの芳香剤」
というイメージがあるのではないでしょうか?
調べてみると、日本では、1970年代からキンモクセイの香りがトイレ用芳香剤に広く採用されました。例えば、1975年発売の小林製薬「サワデー」でも、初期の香りの一つにキンモクセイがありました。当時は汲み取り式トイレがまだ多く、強い生活臭を別の強い香りで覆うという考え方が一般的でした。そこで、甘く強い香りのキンモクセイが重宝されたそうです。
「今ほどインフラが進んでいない頃は、汲み取り式のトイレがほとんどで、戸を開けたら倒れそうな悪臭を放つトイレというのも多かったんです。そのニオイを消すためには、悪いニオイに負けない、より強い香りが必要でした。それが、甘めでかつしっかりした香りのキンモクセイだったんです」トイレの「キンモクセイの香り」が衰退した理由 - エキサイトニュース
そのため、キンモクセイが庭木として植栽されたこともあったようです。しかし、芳香剤は香料を調合してキンモクセイらしさを再現することができるので、天然の花そのものを使う必要はありません。
こうした背景から、ある世代にはキンモクセイが「秋の花の香り」であると同時に「トイレの芳香剤の香り」という記憶にも結び付いているようです。

通勤途中で見かけた見事なキンモクセイ。
10月8日(木)の通勤途中で見かけたキンモクセイは10か所以上ありました。
信号待ちで停まっていた時に、何枚かの写真を撮ることができました。


ここは、車を駐車場に止めて撮影しました。


ところで、かつてトイレ用芳香剤の定番だったキンモクセイの香りは、次第に主役の座を譲っていきました。
その理由として、
①キンモクセイにトイレの香りのイメージが定着しすぎて、反射的にトイレをイメージしてしまうようになってしまった。
②嗜好性の多様化に加え、ニオイのモトを化学的に解明できるようになったことで、ニオイをやっつける、消臭技術が発達した。
つまり、匂いを消すために、より強い匂いを発する、といった発想から、匂いそのものを無くすということに変わっていった、ということのようです。
香りの変遷をチャッピーにまとめてもらいました。

現在のエステーや小林製薬の商品展開を見ると、「石けんのような清潔感のある香り」「自然を感じさせる爽やかな香り」「香水のような上質な香り」が主要なトレンドになっています。
ところが、小林製薬は2026年7月、秋限定の「トイレの消臭元 癒しをはこぶキンモクセイ」を発売しました。かつてトイレの芳香剤を象徴したキンモクセイが、今度は「秋を感じさせる季節の香り」として販売されています。
時代の流れとは言え、面白い変化ですね。
現在は、キンモクセイの香りそのものを楽しめる時代になってきた、ということなのかもしれません。




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