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​身近な風景

読響:シューマン交響曲第3番

執筆者の写真: tokyosalamander
tokyosalamander
13 時間前
読了時間: 6分

2026年10月18日(日)、読売日本交響楽団の日曜マチネーシリーズ「東京芸術劇場コンサートホール」で、ショパンのピアノ協奏曲第1番、シューマン交響曲第3番「ライン」他を聴いてきました。

指揮者は、読響初登場のレスリー・スガナンダラージャです。

1983年スリランカ生まれ、ドイツ育ちの指揮者で、現在ヨーロッパを中心にコンサートとオペラの両分野で活躍する注目の気鋭だそうです。


ピアニストも、読響初登場のアレクサンダー・ガジェヴです。

現在31歳のイタリア出身のピアニストで、2021年のショパン国際ピアノコンクールで、反田恭平と並んで第2位に入賞した実力派です。



<プログラム>

ドヴォルザーク:歌劇「ルサルカ」からポロネーズ

ショパン:ピアノ協奏曲第1番

(休憩)

シューマン:交響曲第3番「ライン」


指揮/レスリー・スガナンダラージャ

ピアノ/アレクサンダー・ガジェヴ


2階席の正面付近から聴きました。

読響を聴くのは、9月20日のラフマニノフ「交響的舞曲」に続いて2回目、会場は共に東京芸術劇場(池袋)です。


今回は、お気に入りのシューマンの交響曲を聴くのが目的でした。

これまでに、第1番(群響、4月)、第4番(N響、9月)、そして第3番(読響、10月)。同じシューマンでも、オーケストラや指揮者、楽器の配置の違いなど、いろいろな表現や聴き方があることを感じました。



第1曲/ドヴォルザーク:歌劇「ルサルカ」からポロネーズ(約5分)


→初めて聴く曲でした。読響初登場のレスリー・スガナンダラージャは、冒頭にオペラからの管弦楽曲を置くことで、オペラ指揮者としての自己紹介の意味合いがあったのかもしれません。また、「ポロネーズ」はポーランドに由来する舞曲ですが、ポーランド生まれのショパンも数多くのポロネーズを作曲したことはよく知られています。オペラ指揮者としての個性を示しながら、2曲目のショパンへ自然に橋渡しする絶妙の選曲でした。


最初の「ポロネーズ」から、読響の豊潤で暖かな響きを感じました。



第2曲/ショパン:ピアノ協奏曲第1番(約43分)


→ピアノ協奏曲第1番は、演奏に約43分かかる大曲です。今回は、ショパンを聴きたいと思っていたわけではありませんでしたが、アレクサンダー・ガジェヴのピアノの強弱や音色、テクニックなど、全く申し分なく、ショパンの音楽の世界にどっぷりと浸りました。また、指揮者とオーケストラとの相性も抜群で、やはり豊潤な暖色系のショパンという印象でした。


アンコールには、グリーグの《抒情小曲集》第1集から、第1曲「アリエッタ」が演奏されました。「アリエッタ」は「小さなアリア」という意味です。

最初はショパンの曲かなと思っていましたが、サロン風ではなく、落ち着いた佇まいの演奏で、ちょっと意外でした。


調べてみると、グリーグは若い頃からシューマンの作品に親しみ、大きな影響を受けていたそうです。しかし、《アリエッタ》が作曲された1860年代、シューマンはすでに亡くなっていました。


アレクサンダー・ガジェヴは、シューマンへの憧れを込めたグリーグの小品をアンコールに演奏することにより、メインのシューマンの交響曲への橋渡しをしてくれていたのかもしれません。



第3曲/シューマン:交響曲第3番「ライン」(約32分)


→シューマンが1850年、40歳のときに作曲した交響曲です。ドイツのデュッセルドルフ市の音楽監督に就任し、ライン川流域の自然や人々の暮らしに触れて創作意欲を高めていた時期の作品です。デュッセルドルフよりライン川上流に位置するケルンの大聖堂を訪れた体験が、特に第4楽章の着想に影響したとされています。なお、「ライン」という呼称は作曲者の没後に付けられました。

ライン川とケルン大聖堂

写真:Gary Todd / Wikimedia Commons(CC0 1.0)


この曲は全5楽章からなり、豊かな旋律と力強いリズム、明るく開放的な響きが特徴です。

第1楽章「生き生きと」:冒頭から力強く雄大な主題が現れ、ライン川の豊かな流れを思わせます。

第2楽章「スケルツォ、非常に中庸な速さで」:民俗舞曲を思わせる穏やかな楽章です。

第3楽章「速くなく」:木管楽器と弦楽器が美しい旋律を受け渡します。

第4楽章「荘重に」:ケルン大聖堂から着想を得たとされる荘厳な楽章。トロンボーンを中心とした金管楽器のコラール風の響きが特徴。

第5楽章「生き生きと」:一転して明るく躍動的な音楽が展開され、輝かしい終結を迎えます。


レスリー・スガナンダラージャ指揮の読響は、このような楽器の配置で演奏しました。


第1・第2ヴァイオリンが左側、ビオラ・チェロ・コントラバスが右側という現代的配置です。以前に聴いた第1番と第4番では、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれた対向配置で、ヴァイオリン同士の掛け合いが効果的でした。今回のような現代的配置だと、どのように聴こえるかに注目しました。


なるほどと思ったのは、第2楽章と第3楽章でした。


第2楽章では、右側の中低音(ヴィオラやチェロ)から生まれた旋律が、オーケストラ全体へ広がり、再び中低音に戻ってくるという作りになっていて、現代的配置ならではの面白さを感じました。

第3楽章では、クラリネットやファゴットが美しい旋律を奏で、ヴィオラが伴奏しています。それにヴァイオリンが応えます。再びファゴットとヴィオラがコラール風の旋律を奏で、さらにチェロに引き継がれます。このように、異なる楽器が旋律と伴奏の役割を交替しながら、一つの音楽を作っていくという構造は、今回の配置で際立ちました。


《ライン》の第2・第3楽章では、第1・第2ヴァイオリンの左右の対話よりも、弦楽器全体の音色の移り変わりや一体感が印象に残りました。


レスリー・スガナンダラージャの指揮ぶりは、体全体を使った躍動感のあるものでしたが、決して大げさではなく、そこから生み出される音楽は温かく親しみ深いものでした。


また、テンポ感が自然で、場面ごとの表情が鮮やかでした。シューマンというと、音楽の急激な変化、内面の葛藤、幻想的な表情などが注目されがちですが、この曲は、人生や自然、人々の営みを肯定するような、おおらかさに溢れていることに気付かされました。音楽が自然に前へ進もうとする生命力を感じました。


この曲の魅力は、弦楽器と管楽器の自然な融合にありました。

各奏者の頑張りを称えていました。


読響との相性もとても良かったと思いました。



9月の読響によるラフマニノフ《交響的舞曲》では、昔レコードで聴いていたオーマンディ時代のフィラデルフィア・サウンドと似ているなと感じましたが、今回の演奏でも読響の豊潤な響きを楽しむことができました。


レスリー・スガナンダラージャ指揮の読響からは、楽器同士の自然な融合、無理のないテンポ感、健康的で温かみのある音楽、独奏者のいる前半でも、オーケストラが主役の後半でも、一貫した音楽的な美しさが感じられました。

 
 
 

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