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​身近な風景

昭和初期の「変わり雛」

執筆者の写真: tokyosalamandertokyosalamander

2025年2月9日(日)。葛生伝承館では、毎年この時期になると「雛人形展」を行っています。今年の見どころは、昭和初期の「変わり雛」です。今でも新鮮な独創的な造形、当時の世相を反映したお雛様は見ごたえがあります。葛生伝承館の展示は「写真・動画撮影OK。SNSへの掲載もご自由にどうぞ」ということですので、その見どころを紹介します。

1931年の日本は、どんな状況だったのでしょうか。1929年(昭和4年)にアメリカで起き世界中を巻き込んでいった世界恐慌の影響が日本にもおよび、1930年(昭和5年)から1931年(昭和6年)にかけては、日本における最も深刻な恐慌でした。そんな中で創られた「変わり雛」に、どんな思いが込められていたのでしょうか。


つる雛」昔から、つるは縁起物です。


ワンニャーン雛」 吉徳で作られたとあれば、今でも人気が出そうです。

賀子持(かねもち)雛」 小判がその時代と願望を物語っています。


お銚子雛」 お銚子二本が「変わり雛」になってしまうところが凄いです。雛祭りを眺めながら、お銚子で一杯、というのが当時のお父さんたちの楽しみだったのかもしれません。


多希の雛」 竹と多希(たけ)をかけています。よく見ると、竹を削って雛を作っています。少しでも希望を見出そうという気持ちの表れでしょうか。


お猪口雛」 お猪口まで「変わり雛」にしてしまう発想が素晴らしいです。雛祭りにかこつけてお酒を呑みたい人たちは、いつの時代でもいたのかもしれません。


幼(おさな)雛」「公孫(いちょう)雛」これらは、完全に作者の心象風景を雛という形に託しました、という感じです。また、公孫だけで「いちょう」と読ませるのは多少無理がある気がします。いずれも三越百貨店で販売されていたことから、当時の人々の心にも響いていたのでしょう。


1931雛」このデザインは今でも色あせることはありません。いけてます!

とり枡雛」枡の中に鶏の雛がいる、ただそれだけ。

乙姫みやげ龍宮雛」男雛と女雛はハマグリの貝でできており、ぴったり合うそうです。これが子供向けに作られたとは、とうてい考えられません。



親子雛」 男雛の肩の上には子どもが乗っています。素直に微笑ましい逸品です。

おしゃもじ雛」 おしゃもじが男雛と女雛になっています。これを見ながら、家族で笑い合えた時代だったのでしょうか。


小田巻雛」 この小田巻が何を意味するのか、調べてもよくわかりませんでした。おそらく「小田巻」という物を模した「変わり雛」なのでしょう。見栄えはとても高級そうです。


琴柱(ことじ)雛」 この形から、琴という楽器の音の高さを変えるための、絃を支える柱であることがわかります。これを「変わり雛」にしてしまおうというセンスはあっぱれです。お琴を習っている子供にはさぞかし受けたでしょう。


国粋雛」 日本刀の鍔(つば)の形を表現しています。両側に男雛と女雛が描かれています。これを「国粋」とするところは、きな臭い時代へと突き進む前触れなのでしょうか。


盃雛」 3つの盃の上に、男雛と女雛が乗っています。この「変わり雛」はシンプルに庶民に受けたのと思います。


住吉雛」「みのり雛」 これらは縁起物として喜ばれた正統派の「変わり雛」という気がします。


この22点が、今回「変わり雛」として展示されていた全てです。作者によって、まったく異なる表現や造形です。「変わり雛」という名を借りて、作者のやりたい放題ですね。楽しめました。振り返って見ると、「変わり雛」は大人の楽しみだったのかもしれませんね。



他にも、見ごたえのある展示がありました。


最後に、巳年にちなんだ展示を紹介します。




 
 
 

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