エノコログサの草紅葉
- tokyosalamander
- 11月9日
- 読了時間: 3分
2025年11月9日(日)、雨上がりの空き地では、エノコログサの草紅葉が綺麗でした。草の葉が紅葉することを草紅葉(くさもみじ)と呼んでいます。

この場所では、9月頃から人の出入りがなくなり、草が茂ってきました。不思議なことに、生えている植物は、ほとんどが「エノコログサ」です。


エノコログサの名前は、穂のふさふさした形が子犬の尻尾に似ていることから、「犬っころ草(いぬっころぐさ)」と呼ばれていたのが、いつの間にか「エノコログサ」になったとされています。漢字では「狗尾草」と書きます。「犬の尾の草」という意味です。
ちなみに英語では「Foxtail grass(キツネの尻尾の草)」と呼ばれているそうです。
また、ネコジャラシという別名もあります。この草で「猫をじゃらす」ことができる、ということから名付けられました。花言葉の「遊び」や「愛嬌」は、こんなところからきているのでしょうか。
エノコログサは、日当たりのよい場所を好む一年草です。道端や空き地、畑、公園など、日が当たる場所であれば、種子から発芽し成長します。
通常、春先に発芽し、夏から秋にかけて生長し、穂を実らせます。秋には葉が紅葉するとともに、穂は緑色から銀色に変化し種子を落とします。紅葉した葉と銀色の穂のコントラストは、命の輝きすら感じさせてくれます。

冬になると地上部は完全に枯れてしまいますが、土の中では無数の種子が静かに次の機会を待っています。
ところで、この場所にはほとんど「エノコログサ」しか生えてません。それはいったい、なぜなのでしょうか。
畑あとの空き地に、どんな植物たちが生えてくるかを5年間にわたって観察した、甲斐信枝さんの著書「雑草のくらし -空き地の五年間-」(福音館書店 1985年)を読むと、1年目の春に芽を出したのは、メヒシバ、ハコベ、オオイヌノフグリ、キュウリグサ、スベリヒユ、そしてエノコログサでした。夏の盛りになると、メヒシバやエノコログサが花を咲かせ、実を結びました。つまり、種子から発芽して増える一年草が、気温の変化に伴い発芽し生長していきました。
今回の空き地に手が加えられなくなったのは、9月以降です。この土地の中で眠っていた多くの種子の中で、この時期に発芽し生長できたのが、たまたまエノコログサだけだったのかもしれません。また、このエノコログサは、エノコログサよりも花期が少し遅い(9~11月)、アキノエノコログサである可能性があります。アキノエノコログサは、草丈50~80cmとエノコログサ(20~70cm)よりも大きく、花穂が長くて先が弓なりに垂れる特徴があります。試しに草丈を測ってみると、80cmを超えるものがありました。

この空き地では、様々な条件が重なって、草紅葉の紫色と花穂の銀色が織りなす秋の風景が完成しました。冷たい雨に濡れて首を垂れる姿には、気品さえ感じられます。

ところで、一年草のエノコログサは根が浅いため、雨上がりの柔らかい土から引き抜くのは、とても簡単でした。花穂をちぎろうと引っ張ったら、根っこから根けてしまいました。

千載一遇のチャンスを逃さず発芽し、陽の光を独り占めして生長し、種子を残して枯れてゆく、エノコログサのシンプルな繁殖戦略には潔さを感じます。




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