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​身近な風景

佐渡裕指揮トーンキュンストラー管

  • 執筆者の写真: tokyosalamander
    tokyosalamander
  • 5月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:5月14日

2025年5月12日(月)、高崎芸術劇場。佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団によるモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番(ピアノ:反田恭平)とマーラー:交響曲第5番が演奏されました。早々に完売御礼の出た超満員の観客が大興奮しました。

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佐渡裕さんは、2015年にオーストリアのウィーンで110年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任しました。日本ではあまり聞き慣れないオーケストラの名称ですが、ハイドンやモーツァルトの時代にコンサートを企画していたウィーンの「音楽家協会」(Tonkünstler-Sozietät)を起源としています。ウィーンではトンク管と親しみを込めて呼ばれているようです。


その後、2回の契約延長を経て10年目となる2024-25年のシーズンで退任することになりました。「佐渡×トンク管」はウィーンの聴衆に深く愛され、楽友協会「黄金のホール」を常に満席にさせる大人気コンビになりました。


今回のジャパンツアーは、5月9日から18日までの10日間で8公演が行われています。プログラムは、モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番(ピアノ:反田恭平)とマーラー:交響曲第5番の一択です。今を時めく佐渡・反田を両方聴くことができる最強のプログラムです。

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開演時間ちょうどの19時、ステージには佐渡さんお一人が登場しプレトークがありました。身長189センチという長身の佐渡さんからは、オーラが立ち昇っていました。ウィーンのオーケストラは、使っている楽器や奏法、音色などが、他とは全く違っている、というお話が印象的でした。そのことは、演奏が始まった瞬間に実感しました。


1曲目のモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番は、ウィーンフィルを思わせるトンク管の深みのある音色と反田さんの鮮やかなピアノ演奏が絶妙にマッチしていました。古いビデオ映像で見たことのあるバーンスタインがピアノの弾きぶりでウィーンフィルを演奏している雰囲気がオーバーラップしてきました。ステージだけを見ていると、ウィーン楽友協会の「黄金のホール」で聴いているような錯覚に陥りました。第2楽章のアダージョは、極限までのスローテンポに深い情感が込められていました。第3楽章は一転して軽快なテンポに戻り、一気呵成に追い込み、爆発的な勢いで曲が終わりました。トンク響の深い音色と鮮やかなピアノによる最高のパフォーマンスでした。もちろん観客は大興奮。アンコールには、なんと、ムソルグスキーの展覧会の絵の終曲を披露してくれました。これで盛り上がらないはずはありません。これだけでも、今日聴きに来た価値はあったと思いました。


休憩時間を挟んだ2曲目のマーラー:交響曲第5番は、モーツァルトを聴いた期待値のはるか上をいく演奏でした。冒頭のトランペットのソロでは、佐渡さんがプレトークでお話されたウィーン独特のトランペットの鮮烈で深々とした響きが会場の空気を一瞬で切り裂きました。想像以上に大きな音でした。曲が進むにつれて、すべての楽器の音色が日本のオーケストラでは絶対に聴くことのできない深みと暖かさを湛えており、厚く立体的に響いていることに感動しました。佐渡さんとトンク響の完成度の高い演奏は、ときに人の声の抑揚の様に底知れぬ説得力を持って響いてきました。すべてが意味のあるフレーズで必然性のある表現であることを感じました。マーラーが自分の曲をウィーンで演奏しているのを聴いているかのような錯覚に陥りました。さて、この曲の白眉はやはり第4楽章のアダージェットです。ややもすると、ここぞとばかりにあざとい演奏にもなりがちですが、意外にも、弱音の超スローテンポでじわじわと進んでいきました。あれっ、この雰囲気は? と思いました。1曲目のピアノ協奏曲第23番の第2楽章アダージョで、反田さんが極限までのスローテンポで弾いた雰囲気が蘇りました。それに続く終楽章の軽快なテンポ感も一緒です。1曲目のモーツァルトがウィーンというキーワードで、マーラーに繋がっていることを実感しました。曲はこれ以上ないくらいの盛り上がりで、圧倒的に終わりました。観客の興奮は最高潮に達しました。


3度目のカーテンコールで、佐渡さんは指揮台に近づくやいなや、ヨハン・シュトラウスのポルカ・シュネル「雷鳴と稲妻」の演奏が始まりました。まさかのアンコールと、いきなりの雷鳴(ティンパニ)に会場はさらなる興奮に包まれました。ウィーンのニューイヤーコンサートの様に、観客の手拍子が入るほどの一体感に酔いしれました。このプログラムのすべてがウィーンで繋がっていました。


終演は21時30分になっていましたが、心地よい疲労感に包まれ、帰途に着きました。

最高のコンサートでした。



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