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​身近な風景

県博企画展・記念講演会

  • 執筆者の写真: tokyosalamander
    tokyosalamander
  • 8 時間前
  • 読了時間: 4分

2026年5月2日(土)、栃木県立博物館で、第144回企画展「新しくやってきた標本たち~集めて、守って、活かす~」の記念講演会が開催されました。

栃木県博の自然史資料収集44年:描いた夢、格闘の日々、そして未来へ」(70分)

講師:林 光武(はやし てるたけ)氏(前 せきつい動物担当)


今回の企画展の開催にあたり、林さんには博物館から「長年にわたる標本収集について」話してくださいという依頼があったそうです。


林さんは私と同年齢なので、すでに博物館は定年退官されています。今回の記念講演会が単なる昔話で終わるのではなく、これからの栃木県博がどのような未来を描いていくのかを引き継ぐ内容にして欲しいという林さんの思いを受け、現在の二人の職員による講話も行われました。林さんの演題中の「そして未来へ」という部分にも、その思いが現れていることを感じました。


林さんのお話は、「博物館は何のために、標本を集めるのか」そして未来に向けては「写真のデジタル情報だけでは、なぜダメなのか」という思いに集約されるのかもしれません。


それを紐解くため、

1.描いた夢 ー開館の頃ー 先輩の話や文献から

というお話から始まりました。


林さんが博物館で描くことになる夢は、学生時代の1989年に参加した「世界両生爬虫類会議」での発表の際、ふつふつと沸き起こっていました。


林さんの研究に使われた標本が残っていないことを質問者はなかなか信じてくれませんでした。しかし、「日本は発展途上国だから」と隣人から耳打ちされて、やっと納得し、憐れむような目を林さんに向けたそうです。これが、博物館での林さんの夢につながる原点となったようです。


栃木県は、まとまった自然史資料(地学、動物、植物関係標本)を持っていませんでした。1982年に開館した栃木県博は、文字通り「ゼロからのスタート」でした。


林さんは栃木県博の開館から9年後の1991年9月から勤務を開始しました。


当時の博物館は、1983年(昭和58年)12月から1984年(昭和59年)4月にかけて日本列島全体を襲った記録的豪雪災害「五九豪雪」(ごうきゅうごうせつ)で大量死したニホンジカの死体が山積み状態でした。


「県内産の哺乳類や鳥類を収集する」ことは、博物館の資料収集方針に適っていますが、標本化作業や標本の整理作業が追い付かない状況になっていました。


そこで、林さんは大きな方針を打ち立てました。


活用できてこその収集。標本化作業・整理作業を進めて、誰でも利用できるようにしよう。宝の素を宝に変えよう、という苦闘の日々が始まりました。



2.苦闘の日々 ー県立博物館学芸員としてー


五九豪雪で大量死したニホンジカの骨格標本化と登録作業は、実に27年間の年月を経て、2011年に完了しました。238体の標本からは、数々の貴重な知見が得られました。


しかし、まじめにコツコツと、冷凍庫やプラスチック樽中の「引継ぎ案件」を処理し、博物館の調査事業で採集される標本を受け入れて整理していたら、収蔵庫に標本を納める余裕がなくなっていました。


林さんの新たな苦闘の日々が始まりました。



3.苦闘の日々 ー収蔵庫の増設に向けてー


2013年に、県議会生活保健福祉委員会の報告書で、適切な収蔵環境の確保について提言がありました。

2014年には、専門機関による調査や有識者による検討会が行われ、資料の収蔵方法に改善の余地はあるが、根本的には収蔵スペースの増設が必要という答申が出されました。


それらを受けて、2015年には、新収蔵庫の増設がコレクションマネジメントとセットで認められました。


ここにたどり着くまでには、想像を絶する苦闘の日々があったと思います。林さんのお話にも力が入っていました。


その検討の過程では、「標本を残すのはなぜ?」という根本に立ち返りました。



それらの考えを突き詰めたものが、


4 標本に関するQ&A でした。

林さんは、ここが最も伝えたかったこと、と言っていました。


<よくある質問>

同じものを集めて、どうするの?


写真(デジタル情報)を残しておけば、いいんじゃない?



5.未来へ


「多くの方々のご理解とご協力によって、標本の作製・整理を進めることができました。収集された標本に、新しい標本が付け加えられ、研究に展示に学習に活用されることを願っています。」


「県博の標本は、現在の、そして将来の県民のみなさんの財産です。もっと言えば、人類共通の財産です。」

未来に向けて、バトンタッチします。


こうして、栃木県博の44年間の自然史資料収集の偉業を振り返ると共に、未来へとバトンが託されました。林さん、素晴らしい講演ありがとうございました。

林さんの講演に続いて行われた、小笠原さんと山本さんの講演も、博物館の未来を感じさせる内容でした。


林さんの思いは着実に引き継がれていることを感じました。


企画展「新しくやってきた標本たち ~集めて、守って、活かす~」も是非、ご覧ください。

 
 
 

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