群響:オール・フランス・プログラム
2026年10月24日(土)、第622回群響定期演奏会が高崎芸術劇場で開催されました。2024年のシーズンに続いて群響2度目のデイヴィッド・レイランドの指揮で、19~21世紀の「オール・フランス・プログラム」が華やかに繰り広げられました。

<プログラム>
〇カミーユ・ぺパン/花火(2025)[日本初演]
〇イベール/フルート協奏曲
〇トマジ/ホルン協奏曲
(休憩)
〇サン=サーンス/交響曲第3番「オルガン付き」
指揮/デイヴィッド・レイランド
フルート/ファビアン・ヨハネス・エッガー
ホルン/濱地宗
オルガン/高橋博子

開演40分前(15:20)、指揮者のデイヴィッド・レイランドのプレ・コンサート・トークが行われました。
デイヴィッド・レイランドさんは、ベルギー出身です。「ベルギーはチョコレートとビールが有名です」という言葉で一気に親しみが高まりました。
「高崎は素敵な場所、雰囲気がいい、素晴らしい楽団員が揃っている。再び戻ってきました!」とてもフレンドリーな方でした。
続いて、レイランドさんから、今日の演奏曲の解説がありました。
1曲目のカミール・ぺパンの「花火」は、日本・アジア初演です。ぺパンはフランス北部のアミアンに生まれで、今とても注目されている女性作曲家です。フランスのポスト印象主義とアメリカのミニマリズムが交差する音楽です。花火がしずかに上がり、最後はフィナーレを迎えます。
2曲目、3曲目の協奏曲は、非常に難しい曲です。独奏者だけでなく、オーケストラにとっても合わせるのが大変な曲です。イベール(パリ生まれ)のフルート協奏曲はとても有名ですが、トマジ(マルセイユ生まれ)のホルン協奏曲は、ここ16、7年、ヨーロッパでは演奏されていません。今回は新たな発見がありました。二人のスーパー・ソリストも楽しみにしてください。
最後のサンサーンス(パリ生まれ)についてですが、彼はパリのオルガン奏者でした。当時のパリは交響曲に人気がなく見向きもされませんでした。交響曲にオルガンを付けることで、交響曲に新たな地平線を描きました。今日の演奏では、第2楽章の16小節目に注目してください。弦の響きの中にピアノが加わります。ここを作曲していた時、敬愛していたリストが亡くなったことが伝えられました。深い悲しみが空から降ってくるように、ピアノが作品に入れられたそうです。
このように、レイランドさんは、とても丁寧にお話してくださいました。誠実さがにじみ出ていました。このことは、彼の指揮ぶりからも感じられました。
今回演奏される4曲について、それぞれが作曲された年と社会情勢、音楽史上の特徴について、チャッピーがまとめてくれました。

第1曲:カミール・ぺパン/花火(約5分)
→5分ほどの小曲ですが、「夕暮れの光のもとで」「最初の閃光」「その前の瞬間‥」「‥グランドフィナーレ」の4つのシーンが移り変わります。群響は、こうした情景を精緻に情感を込めて演奏しました。最初に打ちあがった花火が確かに見えたような気がしました。花火の競演、そしてグランドフィナーレの見せ方・聴かせ方は、ドローンで上空から高速移動しながら撮影した映像を見るような臨場感がありました。最初の5分間で、こんなに引き込まれたコンサートは初めてでした。各楽器の音が鮮明に響く高崎芸術劇場の音響がとても良く合っていました。
第2曲:イベール/フルート協奏曲(約18分)
→この曲の聴きどころは、スーパーソリストのファビアン・ヨハネス・エッガーの超絶的な演奏でした。なにしろ、2007年1月生まれの19歳のイケメンです。今から1年前の2025年、世界で最も重要なフルートコンクールの一つである神戸国際フルートコンクール第11回大会で第1位獲得、ソリストとしても活躍しています。10歳でザルツブルク・モーツァルテウム大学の英才プログラムに入学し、2023年(16歳)よりミュンヘン音楽・演劇大学で学んでいる学生です。
イベールのフルート協奏曲は、フランス音楽らしい洗練された響き、軽快なリズム、優美な旋律、そして高度な演奏技巧が魅力の作品です。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いの圧倒的な演奏で、汗一つかかずに颯爽と去っていく後ろ姿はカッコよかったです。
第3曲:トマジ/ホルン協奏曲(約16分)
→この曲の聴きどころも、やはりスーパーソリストの濱地宗(はまじ かなめ)の超絶的な演奏でした。濱地さんは我らが群響の首席奏者でもあります。こんな凄い奏者が群響にいたのか、という驚きが先に立ちました。濱地さんは、東京藝術大学を首席で卒業後、日本人ホルン奏者初の国際コンクールで優勝(2013年、韓国・済州島で開催されたチェジュ国際管楽器コンクールのホルン部門で第1位を獲得)を果たしています。神奈川フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を経て、現在は群響の首席ホルン奏者を務めています。こうした経歴を見る限り、日本のトッププレイヤーであることは間違いありません。
トマジの《ホルン協奏曲》は、あまり演奏されない曲ということでしたが、色彩豊かな響きと叙情的な旋律に溢れていました。3つの楽章には「田園」「夜想曲」「騎行」という標題が付けられています。ホルンの柔らかな歌声から雄大で力強い響きまで、その多彩な表情には唖然とさせられました。最後の第3楽章「騎行」は、実際に馬が駆けるような躍動感に満ちた演奏でした。もっと演奏されてもいいような気がしましたが、これを演奏するというのは並大抵ではないなと思いました。
演奏終了後も盛大な拍手が鳴りやまず、度重なるカーテンコールがありました。しかし、ステージ中央には立つことなく、楽団員のお陰だと言わんばかりに、舞台袖の近くで左手をオーケストラの方に広げて感謝を伝えていました。濱地さんの人柄を感じるシーンでした。本当に力のある人は、こういう態度を取られるんだなあと感心しました。
第4曲:サン=サーンス/交響曲第3番「オルガン付き」(約32分)
→今回のメインプログラムです。前3曲と比べると落ち着いた響きから始まり、やはり格が違うのかと思いました。サン=サーンスの円熟期(51歳)に書かれた交響曲第3番は、「私の持てるすべてを注ぎ込んだ」と自負した記念碑的作品で、以後交響曲を作曲することはありませんでした。
この交響曲には以下のような5つの特徴があります。(BY チャッピー)
① オルガンを交響曲に取り入れた大胆な発想
→オルガンは独奏楽器というより、オーケストラの響きを拡張する役割を果たしています。特に終結部では、オルガンの荘厳な和音がオーケストラ全体を包み込みます。
② 2楽章構成なのに、実質的には4楽章
→通常の交響曲とは異なり、2つの大きな楽章の中に、それぞれ速い部分と遅い部分が組み込まれています。
③ 循環主題の活用
→曲の冒頭に登場する旋律の素材が、形や性格を変えながら全曲に現れます。これによって、交響曲全体に統一感が生まれています。
④ ピアノの連弾も使用
→オルガンばかりが注目されますが、ピアノの4手連弾も重要な役割を果たしています。特に速い部分では、きらびやかな音色が加わります。
⑤ 暗いハ短調から輝かしいハ長調へ
→曲は緊張感を帯びたハ短調で始まり、最後には堂々としたハ長調へと到達します。暗さから明るさへと向かう劇的な構成です。
しかし、最大の聴きどころは、終楽章でオルガンが壮麗に響き渡る場面でした。
オルガンは舞台上のコントラバスの隣に配置されていたようでしたが、前から7列目中央の私の席からは、演奏中にその姿を確認することはできませんでした。オルガンは終盤だけでなく、第1楽章後半にも登場しました。柔らかく弦楽器を支えるように響きだったので、ああ、こんな風にオルガンが鳴るのか、と思いました。
しかし、終楽章で響き渡ったオルガンの音は想像以上に壮大で、オーケストラ全体を包み込むような迫力がありました。いったいどこから音が出ているんだ、と思いました。オルガンとオーケストラが一体となった圧倒的な響きは、暗闇から光へと導かれるような驚きと感動がありました。
この作品は、普仏戦争の終結から15年後、フランスが独自の器楽音楽を発展させようとしていた時期に誕生しました。それまで交響曲の分野では、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスなど、ドイツ・オーストリアの作曲家たちが大きな影響力を持っていました。
サン=サーンスは、そうした交響曲の伝統にオルガンを加え、フランスならではの音色感覚や管弦楽法を融合させました。また、この作品には、サン=サーンスが敬愛していたフランツ・リストの影響も色濃く現れていると言われており、出版譜に「リストの思い出に」という献辞が記されました。
指揮者のデイヴィッド・レイランドさんは、指揮棒を持たずに体全体を使った指揮で、群響から躍動感と流麗な響きを引き出していました。長身の体をかがめて小さな音を指示したり、両手を左右に大きく振って、弦楽器奏者を鼓舞したりする姿が印象的でした。とても誠実であり、音楽の職人という心意気を感じました。情熱とそれを伝える技がかみ合い、音楽が生まれ躍動する姿を目のあたりにしました。



今回も、前回に引き続き、素晴らしい演奏を聴かせていただきました。




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