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​身近な風景

執筆者の写真tokyosalamander

失われた在来種「ヌカエビ」

更新日:2023年8月1日

7月23日(日)、草野さんから「ヌマエビの仲間」の動画が送られてきました。タイムプラスによる動画(5秒ごとにワンショット撮影)なので、動きが速く感じられます。

栃木県内の平野部で普通にみられる在来のエビは、ヌカエビ、スジエビ、テナガエビのほぼ3種に限られています。動画は小型のエビなので、ヌカエビ、あるいは、スジエビやテナガエビの子どもなのでは、と思いましたが、どうやら、それは大きな間違いでした。


↓この写真も草野さんから送られてきました。


栃木県立博物館の第135回企画展「甲殻類ワールド」(令和5年4月29日~6月18日)の中で、県内の「ヌカエビ」が東アジア原産の外来種「カワリヌマエビ類」に駆逐され、急速に拡大していることを思い出しました。


そこで、このエビが何なのか、草野さんが採集した個体を翌日(24日)わけてもらい、調べてみることにしました。

私のイメージでは、「ヌカエビ」は気性が穏やかで、動きもそれほど敏捷な感じはありませんが、この「ヌマエビの仲間」は、動きが激しく、気性も荒らそうです。


これが「ヌカエビ」かどうかは、眼が真横に出ているか、斜め前に出ているかが、わかりやすい見分けるポイントです。

写真で見ると、眼は真横ではなく、斜め前に出ているのがわかります。

他にも、見分けるポイントはありますが、このエビは、在来種「ヌカエビ」ではなく、外来種「カワリヌマエビ類」であることがわかりました。


外来種「カワリヌマエビ類」が栃木県内で初めて確認されたのは、2011年です。それ以降、ヌカエビとの競合に打ち勝ち、急速に分布を拡大しています。


博物館の企画展では、2016~2018年の調査と、5年後の2021~2022年の調査を比較していました。それによると、わずか5年間で、ヌカエビがカワリヌマエビ類に置き換わっていることがわかりました。(以下は、同企画展のパンフレット(p43)からの引用です。)


この写真は、草野さんが今回「ヌマエビの仲間」(カワリヌマエビ類)を採集した場所です。ありふれた水田の水路です。調べてみると、栃木県だけでなく、関東地方のヌカエビの多くは、すでにカワリヌマエビ類になっているそうです。カワリヌマエビ類は、ペットショップなどで販売されたもの(シナヌマエビなどと呼ばれています)が野生化したと考えられます。

「2018レッドデータブックとちぎ」では、在来種「ヌカエビ」は準絶滅危惧(Cランク)に指定されていますが、このペースで「カワリヌマエビ類」が広がると、近い将来、県内では「ヌカエビ」の姿を見ることができなくなるかもしれません。少なくとも、県南の市街地付近では、すでにほぼ消失しています。


かつては普通にいた「ヌカエビ」。気が付くと消えていました。


とても恐ろしいことですが、これは氷山の一角のような気がします。


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