群響「近現代のフランス音楽」
- tokyosalamander
- 5 日前
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2025年10月18日(土)、高崎芸術劇場で第612回群響定期演奏会が行われました。群響と初共演の指揮者デュムソーによる「近現代のフランス音楽」が演奏されました。終曲のラヴェル「ボレロ」では、デュムソーと群響の魅力が爆発しました!

今回のプログラムです。

・武満徹:弦楽のためのレクイエム(1957)
・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
・ファビアン・ワックスマン:アコーディオン協奏曲「時の鳥」(2021)
・ティボー・ベリーズ:アコーディオン奏者のカプリス
・ラヴェル:バレエ音楽〈ダフニスとクロエ〉第2組曲
・ラヴェル:ボレロ

1曲目の武満徹「弦楽のためのレクイエム」(1957)は、1959年に来日したイーゴリ・ストラヴィンスキーが注目したことで、武満の名が国際的に知られるようになりました。指揮者デュムソーさんは、指揮棒なしで、明晰に、しかも情感を込めて演奏しました。拍手に応える際、「弦楽のためのレクイエム」の楽譜を胸に掲げ、武満徹へのリスペクトを表していました。
2曲目の「牧神の午後への前奏曲」は、冒頭からフルートのパートが重要な役割を果たしています。群響フルート首席奏者の中條さんの演奏は完璧でした。演奏後の拍手はとりわけ、中條さんに贈られていました。また、この曲は点描画のような雰囲気を味わう曲でもありますが、デュムソーさんの指揮は、緻密で一つ一つのパートがはっきりと聞こえてきます。4Kの画像で見るような演奏でした。
3曲目のファビアン・ワックスマン:アコーディオン協奏曲「時の鳥」(2021)は、まさに現代音楽です。アコーディオンの超絶技巧をいともたやすく演奏するフェリシアン・ブリュさんは、世界最高峰の奏者です。曲はいきなり大音響から始まり、多様な打楽器が活躍する、色彩感豊かなラテン系の大曲でした。指揮者デュムソーさんとの相性も抜群でした。
4曲目のティボー・ベリーズ「アコーディオン奏者のカプリス」では、同じアコーディオンが活躍する曲ですが、雰囲気はがらりと変わりました。まるで酒場でシャンソンを演奏するような空気感が醸し出されていました。私が抱いていたアコーディオンのイメージ(大衆楽器)に近いものであり、一気に親しみが湧きました。3曲目と4曲目を連続して聴くことによって、アコーディオン奏者フェリシアン・ブリュさんの多彩な才能を堪能することができました。アンコールの曲はしっとりとした雰囲気で、独特な音色の魅力が体に染み入りました。
休憩後の5曲目から、ラヴェルが登場しました。バレエ音楽〈ダフニスとクロエ〉第2組曲は、やはり冒頭のフルートから始まります。ここでも群響のフルート奏者は大活躍です。もちろんフルートだけでなく、さまざまな楽器がソロとして活躍しました。デュムソーさんの指揮は、管楽器などのソロと弦楽器のバランスに気を配っているので、聞こえ方の遠近法が徹底していたと思います。それによって、立体的な厚みを持った演奏が繰り広げられました。ここでも指揮棒は使わず、体全体を使って、この曲が目指す姿を視覚的にも見せてくれました。この時点で、この指揮者は凄い実力者だなと感じ始めていました。それが確信に変わったのは、次の「ボレロ」でした。
終曲「ボレロ」は、小太鼓の微かなリズムから始まります。全曲は、明快な主題と副主題が交互に各9回、毎回異なる独奏楽器や異なる組合せの合奏によって進んでいきます。最初の頃は、指揮者のデュムソーさんは、ほぼ何もせず、独奏楽器の演奏に聞き入っているかのようです。この曲で指揮者がすることって何なんだろうと思いました。ところが、曲が進むにつれて、デュムソーさんは、音のバランスに細かく注意を払い、さらに、合奏に抑揚をつけるようになり、情感が籠ってきました。明晰さとパッション、それらが楽員にビシバシと伝わっていました。通常、曲は最後の転調を経て、一気に大団円へと向かってなだれ込み、大きな盛り上がりを見せますが、この演奏では、転調のだいぶ前の合奏の辺りから、ただならぬ雰囲気が漂い始めました。その結果、転調前と後がシームレスに連動し、相乗効果で盛り上がっていきました。こんな演奏を聴くのは初めてでした。こんな演奏ができる指揮者は只者ではないことを確信しました。

会場は、ブラヴォーの嵐となりました。

まずは、終始、同じリズムを刻んでいた小太鼓奏者が呼び出され、大きな拍手を浴びていました。そして、楽団員すべてを紹介し、それぞれ大きな拍手が贈られました。

指揮者のデュムソーさんは、3回ほどカーテンコールで呼び出されていましたが、最後はもう勘弁してと、周囲に感謝を込めて挨拶し、去っていきました。

「世界が注目する指揮者デュムソー」というキャッチコピーは、本物でした。




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